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1. 瞼と目の輝き 瞼の手術の感動

人は目を見て話し、目の表情で感情を表し、目で魅了します。目は視覚以外に大変大きなコミュニケーションツールとして働いていて、この場合の目とは眼瞼が主役です。

目の開きが狭くなったり、瞼が下がってくると、瞳に日差しが被ってしまい、目に光の反射がなくなってしまいます。歳を重ねてくると眼瞼の皮膚がたるんで、二重の被さりが大きくなってきます。更にたるみが進むと、鬱陶しく、瞼が重くなってキラキラ感が少なくなってきます。

適切な処置をして、開きが改善、皮膚の日差しがなくなると途端にキラキラしてくるのはそのためです。瞼が開けやすくなるのはもちろんですが、自然で柔らかく折れ込む二重と共に、瞳の光のキラキラ感が、外側からも引き立てます。手術中、二重を固定した時、息を飲む目ヂカラに最初に感動するのは他ならぬ術者で、形成外科医冥利につきます。

2. 西端博士の遺品 鼻の手術の身震い

大正末期に慶応大学耳鼻科西端教授は象牙を加工したプロテーゼを梅毒性鞍鼻の治療に用いた事で、鼻の形態手術の祖として、知られています。偶然にも大学時代の友人が、そのお孫さんにあたり、鼻の形態手術を行なっている事から、博士の形見分けとして昭和20年代の博士の覚書のノートをいただく光栄に預かりました。論文と異なり、患者とのやりとりと術中の所見が素晴らしい図と共に記されていて、元々画家志望だった博士の挿絵の精緻さはそのまま教科書になるレベルでした。昨今の鼻の手術の細かな分析はすばらしいものですが、ノートを拝見すると現在と同様か、あるいはそれ以上に細かな要素に対応しておられたことが伝わり、時を超えたメッセージに身震いしました、

3. 美的歪み ヴィーナスの課題

ミロのヴィーナスの腕の再建が話題になったことがあります。色々な分野の学者がポーズを含めて検討されているのは、当時の文化や宗教観など総合的な視点で、興味は尽きまさん。しかし、今知られている腕の無い状態で鑑賞している目には、腰に巻きつく布で安定した下半身とわずかに捻れた上半身がバランスよく見えます。かえって腕をつけるとバランスが取りにくく、理にかなった再建も、どうにも陳腐なものに見えてしまいます。このように相変わらずこれらの課題を突きつけて佇む事か大きなアイデンティティになり、神格化されているのだろうと思います。

美という観念的な視点はバランスのとれた形からでは感動が少なく、その中から歪みを見出し、推測が加わって感動が深まると思っています。

4. poetic reality そこはかとない誇張

既に日常生活のTPOや、多くの文化的なものは何かを誇張表現、デフォルメーション された事物の中で暮らしています。周囲に惑わされると身の丈を超え、疲れてしまいます。目的とする形を少し強調、しかし、その基準は自分を中心とした詩的なものであることが望ましいと思います。

5. cosmeticとcomotic 身だしなみと化粧

身だしなみとオシャレはなかなか線が引きにくい。今では化粧することが身だしなみとほぼ同じ意味に扱われ、男女差もつけなくなりました。ローマ時代の大衆浴場での交流からの話題になっていて、現在ではではTPOに近いのかもしれません。確かに自分でコントロールできる身だしなみと化粧はその度合が論じられているだけのようにも思えます。しかし美容外科手術はそれに不可逆的な要素が加わります。化粧映えで判断するか、スッピンで身だしなみベースで判断するか、どうか一緒に相談しましょう。

6. タニアコッチの復権 形成外科認知

記録がある世界最古の大学とされる16世紀のボローニャ大学のタニアコッチは二の腕の皮膚の皮下組織を移植して決闘で削がれた鼻の再建手術を行いました。後の世に伝えるべく記録に残しています。このことから彼は形成外科な父と言われていますが、中世ヨーロッパでは外科手術は野蛮なものと捉えられ、更に人の形に人が関与する事自体、神への冒とくと考えられて、死後カトリックの墓地には入れてもらえなかった様です。昨今ようやく再評価され、カトリックの墓地に埋葬されました。

7. 視診と指針

一目見てこの患者さんは何の悩みがあるのかと一目で推察できそうですが、見立てと異なる御希望 の場合が少なくありません。主観と客観の隔たりは一般的にもよくある話ですが診療となると慎重を要します。形成外科、美容外科は心療外科としての方向性持っていて、あくまで患者さんのご希望にあった展開をいたします。そしてその後に医師としての意見を加えて隔たりを合わせる努力していきます。最近では3D画像を用いてこの隔たりの補正を行なっています。納得できる内容理解までのこれらの操作にこそ時間をかけるべきと思っています。

8. 人は見かけによる?

ひとは見かけによるでしょうか?その人の価値は判りませんが、少なくとも最初に与える印象や気分などはは大いに見かけに頼っています。見かけとはヒトの形と仕草、佇まいと表情、動作などで総合的に作られる、もしくは醸し出されるものの総称と考えていいでしょう。置かれた社会的立場から、それにあった行動や仕草が身に付いできます。ですからそれを見て判断する方も曇りなき目を培って行かなければなりません。その相互関係の中で、手術で操作される形はその一部でしかありません。この小さなキッカケで大きな効果を上げる方向付けを一緒にいたしましょう。

9. アンチエイジングからウェルエイジングへ

すっかり市民権を得たアンチエイジング、加齢は病気だから医療の力で行く行くは不老不死に、というストイックなモノではなく、楽しく、健康的に年を重ねていくことが再認識されてきています。それぞれのライフスタイルで異なりますが能動的で輝きのある時間をいかに長くしていくかがそれぞれの課題となっていきます。